「はじめに」

私は結婚するまで、温泉郷にあるホテルで働いていました。
実家に両親と一緒に住む兄は、旅行好きで、
それも温泉宿を巡るのが趣味ということもあって、
私の働くホテルにもよく友達を連れて遊びに来てくれていました。
その時には、両親の様子や地元の話をしてくれて、
マメじゃない私には唯一の情報源が、とても有難かった記憶があります。

兄は、まとまったお休みは必ずと言っていい程、旅行に出かけ、
その為に働いているんじゃないかと思う程、温泉を好んでいました。

思い返してみれば、私に会いに来てくれていたのは、口実だったかも!?
と過ったりもしましたが、私にとって、
ありがたい時間だったことに変わりはありません。

 
 

「やっと帰れた産後里帰り」

実家を出て、一人暮らしを始めてから数年。
仕事が仕事だけに、お盆、お正月、ゴールデンウィークはずっと仕事で、
そのタイミングを逃してしまうと、平日にお休みが取れたからといって、
わざわざ実家に帰るのも・・・と渋ってしまい、
結婚するまでは、ろくに実家に帰ることもしませんでした。

落ち着いて実家に帰ったのは、結婚して子供を出産した時でした。
1ヶ月程、里帰りで母に甘えた生活をし、
明日からは元の生活に戻るという日の夜。

荷物を片付けていた私の元に「遅くなったけど」と、
兄はお祝いを持ってやって来ました。
それは、きっと彼女さんに選んでもらったのであろう、
兄には似つかわしくないかわいらしいご祝儀袋でした。
照れくさそうな雰囲気を私も察したので、
遅くなってしまった意味もなんとなく分かりましたし、タイミングが合わなかったのだろうと、
勝手な想像をして、思わず笑いが込み上げて来ました。

 
 

「兄の背中を押す息子の寝顔」

「俺もそろそろ結婚しようかな~」
という言葉から会話は再開され、「こんなにかわいい大事な存在が羨ましい。」
と兄は私の隣で眠る息子の頬をつついて話を続けました。

「お父さんも、お母さんも心配してるんだから、結婚する気があるなら、
ちゃんと伝えてあげなよ。」と私は返しましたが、
これは彼女さんへももちろんですが、両親にも・・・という意味も込めて。
「ろくに実家に帰って来てないお前が言うな。」
とすぐに反撃されてしまいましたが、今までの私の行動は、兄が言う通りなので。

それを素直に認めると、真面目な話は一気に笑い話になってしまいました。
そんな風に言いながらも、マメじゃない性格の私は、
いつもこうして兄の優しさに救われて来たのだと改めて実感しました。
感謝の気持ちで一杯で、荷物を片付けていた手を止め、
兄を見ると、息子を嬉しそうに見つめていました。

 
 

「兄の趣味に寄り添えたカタログギフト」

後日、兄からお返しのカタログギフトが届いたと連絡がありました。
その中から「新潟瀬波温泉の大観荘 せなみの湯」を選んだと知らせてくれました。
“さすが!お兄ちゃん。絶対「ペア日帰り温泉」を選ぶと思ってた“
と返信すると、まだ行った事がない温泉だったようで、
”オレンジ色に光る空と、
どこまでも広がる日本海を眺められる露天風呂で、体も心も温まって来る!“
とすでに嬉しそうな文字が並んでいました。
そのメールを見て、形だけのお返しではなく、
私の想いがきちんと兄へ届いたのではないかと思えました。

 
 

「内祝いで伝えられた感謝の想い」


それから数週間後。
まとまった休みが取れたという兄から、メールが届きました。
幸せ溢れんばかりの最高の笑顔の兄の隣には、彼女さんが恥ずかしそうに微笑んでいる写真が添付されていました。
背景は、カタログギフトで選んだ温泉のようで、十分に満喫している様子が窺えました。
“最高の湯だった!“と付け加えられたメッセージに、満足してもらえる内祝いになったのだと安心が半分。あとの半分は、兄に少しでも恩返しが出来たのではないかという私の喜びです。家族と繋がっている時間は幸せな気持ちになります。

 
 

「おわりに」

兄の結婚の報告も、そう遠い話ではなさそうです。
この子にも、こんなに素敵なお兄ちゃんになって欲しいなと、
愛しい我が子を抱きしめました。

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