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カタログギフトのたき新 > 体験ストーリー > 体験ストーリー「素敵な贈り物のヒミツ」

「春・東京」

四人兄弟の末っ子、泣き虫で甘えん坊だった亜紀が出産した。 長男の僕はたまたま海外勤務から一時帰国していた。 ちょうど桜が満開の頃で、どこへでかけても淡いピンク色が 景色の中でふんわりしながらも強い生命力を放っていた。 日本での仕事をしている間ずっと、 僕は亜紀が無事出産することを願っていて、 父親のように「いつ生まれるのか」とそわそわしていたと思う。 僕と亜紀とはちょうどひとまわり、 12歳の年の差があり僕と亜紀の間には二人の男兄弟がいる。 つまり亜紀はうちの兄弟の紅一点だ。 結婚しているのは亜紀だけだから、 亜紀の出産によって僕ら兄弟三人は「おじさん」になるわけだ。 出産予定日を過ぎて、兄弟のラインでは「まだ?」「うん。まだみたい」 「お前と一緒でノロマなんだな」「ほっといて!」 といったやりとりばかりがされていた。 この雨で残りの桜もすべて散ってしまうだろうとラジオが言っていたその日、 「祐二です。無事産まれました!女の子です。 名前は桜を見ながら出産を待ったので、 咲良にしようと二人で決めていました」 と亜紀の夫からラインが入り、 僕たち兄弟は大喜びでお祝いの言葉を贈った。 残念なことに亜紀の出産した病院では 産婦や新生児のお見舞いを禁止していた。 僕は仕事のためにまたイギリスへ戻る必要があり、 咲良の顔を見ることができないまま、 両親にお祝いの祝儀袋を預けて出発した。 すぐ下の弟は仕事で大阪に住んでいて、 いちばん下の弟は岐阜で職人の修行をしているから、 やはりすぐに来ることはできないようだった。 今度僕が帰国する3ヶ月後に、 みんなで集まって赤ちゃんのお披露目会をしようと亜紀はラインで提案してきた。 そこには優しい顔をした亜紀が目を閉じた亜紀の娘、 咲良を抱いている写真と、咲良だけの写真があった。 僕ははっきりと、 亜紀が生まれたときのことを思い出していた。 仕事を終えて帰ってきた父親と二人の弟と一緒に、 母親と新生児の亜紀に会いに病院へ行ったあの日。 初めての妹。僕は本当に嬉しかった。 絶対に可愛がる、僕がすべての悪いものから守ってやると思った。 残暑が厳しい日で、母親が「早く秋にならないかしらね」 と言ったことから「亜紀」の名前が決まったのだ。 その亜紀の娘は桜の季節に産まれ「咲良」と名付けられたわけだ。 僕は咲良の写真をスマホで見ながら亜紀が生まれた日を思い出し、 成田空港の出発ロビーで泣き笑いのおかしな顔をしていたと思う。

   
「初夏・鎌倉」

咲良のお披露目会は、 東京の実家ではなく亜紀の住む鎌倉の自宅でおこなわれた。 実は「お披露目」というけれど、 それってどうなのかと思うくらい頻繁に、 兄弟のラインには咲良の写真が貼られていた。 笑った顔、泣いた顔、拗ねているような顔、そして寝顔。 僕はイギリスで仕事をしていたけれど、 もう叔父としては充分すぎるくらいに咲良の顔は見ているのだ。 おそらく二人の弟も同じ気持ちだろう。 蒸し暑い日だったけれど初夏の鎌倉はどこも新緑が美しく、 歩くことが苦にならない。 到着した僕がワクワクしながらインターホンを押すと、 亜紀はすっかり母親らしい慣れた手つきで咲良を抱っこしたままドアを開けた。 「ほら、和史おじちゃんよ」 咲良はじっとこっちを見ている。 写真と同じ顔の赤ん坊から、写真には写らないものが僕に届く。 亜紀が生まれたときと同じ、愛おしい気持ちがこみ上げた。 なんてみずみずしい生き物なんだろう。 瞳の白目は透き通って青みがかり、 唇のみずみずしく淡いピンク色は見たことのない輝きで光っている。 「だっこする?」 ただ立ち尽くしている僕に亜紀は咲良を渡そうとした。 「あ、ちょっと待って。手、洗ってから。お邪魔します」 何度か遊びに来たことのある亜紀の家なので僕は洗面所に向かって急いだ。 「おーす!」「久しぶり-!」 二人の弟たちはもう到着していたようで、リビングから声が聞こえてきた。 それから僕らは咲良の写真を撮りまくり、 亜紀の夫の祐二くんと一緒に大騒ぎしながら食事をしていたけれど、 「咲良が寝付きそうだから」 という亜紀のささやき声で急に静かになった。 ようやく寝付いた咲良の顔を見てから、 僕ら三兄弟は「出産のお祝い、ありがとうね。これ」 と亜紀に手渡されたカタログギフトを持ち帰った。

   
「正月・東京」

「え!じゃあ貴史もなの?俺だけかと思ったのに」 「それがさあ、和史もだって」 「まじで~!三人ともか!」 正月に実家に集まった僕らは、 驚きながら笑い合っていた。 亜紀が出産祝いのお返しにとくれた可愛らしい表紙のカタログギフトで僕は、 母親が好きそうな山中塗りの美しい大鉢を選んでプレゼントしていた。 すると、弟の貴史はこだわりのある父親が喜びそうだと、 純銅のおろし金をプレゼントしたのだという。 そしていちばん下の弟の健史は、 料理好きの母親に耐熱ガラスのレクタングルロースターを贈っていた。 テーブルには毎年恒例の母親手作りのおせち料理が並び、 僕の贈った大鉢にはお煮染めが彩りよく盛られている。 健史の贈った耐熱ガラスのロースターの真ん中には ローストビーフの塊が香味野菜に囲まれて、カットされるのを待っている。 「あけましておめでとう!!」 正月はできるかぎり実家に集まるようにしている僕らは、 いつものように挨拶をして食事をはじめた。 「おまえ達、気の利いたものを贈ってくれるようになったな」 父親が笑っている。 亜紀の出産内祝いだということはすでに知っているらしい。 「和史も貴史も健史も、こんな素敵なもの選べるはずないわよねえ。 亜紀が素敵なカタログギフトを選んだおかげでしょ」 母親も笑っている。 「なんだよ。せっかくプレゼントしたのに亜紀のおかげだってか」 健史はそう言いながら大鉢から八つ頭をつまみ出す。 「いや、本当にありがとう。嬉しかったよ。 この器を見る度に咲良が生まれたときのこと思い出せるからな」 「ほんと、ありがとうね。 みんなが集まるたびに使えるもので、嬉しいわ」   明日には亜紀の家族も来る予定だ。 咲良もすこしずつ大人と同じものを食べているというから、 母親も作りがいがあるだろう。 「あなたたちの子供を見るのももうすぐかしらね」 末っ子に初めての孫ができた母親は楽しそうに微笑む。 亜紀のおかげで僕らはきっと、内祝いに迷うことはないだろう。

   

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